私は、もともとは、ジャズシンガーでした。
学生時代、社会人のビッグバンドでジャズを歌っていて、ジャズシンガーの綾戸智絵さんに、ジャズボーカルの手ほどきを受けました。本場顔負けのブルースフィーリングを持つ綾戸先生とは、全くキャラの違う私でしたが、綾戸先生は「あんたにはあんたにしか歌えん歌っちゅうのが絶対あるねん。これが好きやーーって思うもんを探して、思いっきり自由に歌とたらええねんで。上手いこと歌おうとか誰かの真似しようとかよりも、自分がこれや!思うように歌うのが大事や」と仰いました。
これは、今でもずっと私を支えて続けている言葉です。綾戸先生、本当にありがとうございます。
ジャズはブルースから生まれた音楽。ジャズは今でも大好きでよく聴きますが、自分で歌うとなると、何かが違う。自分の中に「ブルース」がかけらも無い。自分の中に無いものは、どう頑張っても出てこない。自分のジャズ表現に限界を感じながらもがく日々ー。
そんな時出会ったのがBossa Novaでした。イパネマの娘、Chega de Saudade、One Note Samba、Wave、Desafinadoなどなどお馴染みの曲たちです。Antonio Carlos Jobimの音楽にJoão Gilbertoの声とギター。爽やかな吹き抜ける風のような、それでいて光と陰を擁している。
「この世界は私がそのままの私で飛び込める!」
「私はボサノバを歌いたい!」
「この音楽の世界の中に入りたい」
一瞬でブラジル音楽に恋をしたのでした。